田中・大村法律事務所

電話番号:079-284-0505

ブログblog

2020.5.21.

養子縁組解消に伴うトラブル解説!手続きの流れ・苗字・連れ子・死亡

養子縁組とは、「親子関係のない者同士に、法律上の親子関係を成立させる制度」です。

養子縁組には、①普通養子縁組と、②特別養子縁組の2種類があります。

①普通養子縁組とは、戸籍上において養親とともに実親が並記され、実親と法律上の関係が残る縁組形式のことです。

②特別養子縁組とは、子の福祉の積極的確保の観点から、戸籍の記載が実親子とほぼ同様の縁組形式のことです。

本稿では、一旦なされた養子縁組を解消する場面におけるトラブルや、解消のための手続や、それに伴う諸問題(苗字はどうなるのか等)について解説していきます。

養子縁組を解消する意味とは?

まずは、普通養子縁組と特別養子縁組を簡単に比較してみましたので、以下の対照表をご覧ください。

 普通養子縁組特別養子縁組
成立養親と養子との合意・家庭裁判所の決定
・実父母の同意(但し、実父母が意思表示できない場合や、実父母による虐待等がある場合は、実父母の同意は不要)
要件<養親>
成年に達した者

<養子>
尊属又は養親より年長ではない者
<養親>
・原則25歳以上(一方が25歳以上ならば、他方は20歳以上で可)
・配偶者がある者

<養子>
原則、6歳に達していない者
※子の利益のため特に必要がある時に成立
実父母との親族関係終了しない終了する
成立までの監護期間特段の規定なし6カ月以上の監護期間を考慮
離縁原則、養親及び養子の同意による養子の利益のため特に必要のあるときに、養子、実親、検察官の請求により離縁
戸籍の表記実親の名前が記載され、養子の続柄は「養子(養女)」と記載実親の名前が記載されず、養子の続柄は「長男(長女)」等と記載

養子縁組の解消とは、養子縁組によって成立した「法的な親子関係を消滅」させることです。

例えば、あなたが結婚相手の連れ子を養子にした場合は、あなたとその子どもと血縁関係がなくても、養子縁組の成立によって、法律上、あなたとその子どもは「親子」になります。

つまり、その養親・養子という法律上の親子関係を解消しない限り、あなたとその子どもは、互いに、扶養義務を負ったり、遺産相続権が発生したりする等の法的な権利義務関係が続くことになります。

養子縁組が解消されれば、相互に扶養義務を負うことはなくなり、相続権も発生しなくなり、法的な権利義務関係がなくなりますので、実情に応じ、適切なタイミングで養子縁組の解消をすべきことになります。

以下では、参考として、特別養子縁組に関する民法の規定を挙げておきます。

(特別養子縁組の成立)
第817条の2 家庭裁判所は、次条から第八百十七条の七までに定める要件があるときは、養親となる者の請求により、実方の血族との親族関係が終了する縁組(以下この款において「特別養子縁組」という。)を成立させることができる。
(養親の夫婦共同縁組)
第817条の3 養親となる者は、配偶者のある者でなければならない。
2 夫婦の一方は、他の一方が養親とならないときは、養親となることができない。ただし、夫婦の一方が他の一方の嫡出である子(特別養子縁組以外の縁組による養子を除く。)の養親となる場合は、この限りでない。
(養親となる者の年齢)
第817条の4 二十五歳に達しない者は、養親となることができない。ただし、養親となる夫婦の一方が二十五歳に達していない場合においても、その者が二十歳に達しているときは、この限りでない。
(養子となる者の年齢)
第817条の5 第八百十七条の二に規定する請求の時に六歳に達している者は、養子となることができない。ただし、その者が八歳未満であって六歳に達する前から引き続き養親となる者に監護されている場合は、この限りでない。
(父母の同意)
第817条の6 特別養子縁組の成立には、養子となる者の父母の同意がなければならない。ただし、父母がその意思を表示することができない場合又は父母による虐待、悪意の遺棄その他養子となる者の利益を著しく害する事由がある場合は、この限りでない。
(子の利益のための特別の必要性)
第817条の7 特別養子縁組は、父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるときに、これを成立させるものとする。
(監護の状況)
第817条の8 特別養子縁組を成立させるには、養親となる者が養子となる者を六箇月以上の期間監護した状況を考慮しなければならない。
2 前項の期間は、第八百十七条の二に規定する請求の時から起算する。ただし、その請求前の監護の状況が明らかであるときは、この限りでない。
(実方との親族関係の終了)
第817条の9 養子と実方の父母及びその血族との親族関係は、特別養子縁組によって終了する。ただし、第八百十七条の三第二項ただし書に規定する他の一方及びその血族との親族関係については、この限りでない。

養子縁組を解消する手続きと流れ

養子縁組を解消するためには、離婚の場合と同様、①協議、②調停、③審判、④裁判という4つの方法があります。以下では、それぞれの内容について簡単に説明します。

①協議離縁

まず、養親と養子とで話し合いをし、協議離縁による養子縁組解消を目指すことになります。双方が養子縁組解消について同意すれば、「離縁届」を作成し、それを役所に届け出ることになります。届出に形式上の不備がなく、窓口で受理されれば、離縁となって戸籍の書換えがなされます。

②調停離縁

話し合いをしても離縁について合意形成できない場合や、そもそも相手と話し合いができない場合であれば、家庭裁判所に「離縁調停」を申し立てることになります。

離縁調停をすると、家庭裁判所の調停委員が間に入る形で、離縁のための話し合いを仲介してくれます。

例えば、「結婚に際して相手の連れ子との間に養子縁組をしており、相手と離婚することになった場合」、種々の事情を考慮してもはや養子縁組を継続する必要性がない状況であれば、調停委員から養子に対して、養子縁組解消に応じるよう話をしてもらえるでしょう。そして、その結果、養子が養子縁組を解消することに応じたら、調停によって親子関係を終了させることが可能です。

離縁調停が成立すると、調停調書が作成され、これを役所に持参して離縁届を提出すると、戸籍を書き換えてもらえます。なお、戸籍法上、離縁届は調停成立日から10日以内に届出する必要がありますので、できるだけ速やかに急いで提出しましょう。

③審判離縁

離縁の調停が審判手続に移行することは極めてまれです。例えば、先行する調停手続で離縁について明確に合意できていたのに相手が裁判所に来られなくなったなど、離縁を認めるのが相当と考えられるときには、「審判」によって離縁となることも有り得ます。

審判が成立すると、審判書が届きます。その後2週間経つと審判が確定するので、それから裁判所に申請をして確定証明書を入手します。そして「審判書」と「確定証明書」を役所に持参すれば、離縁届を提出できます。

④裁判離縁

離縁調停で合意形成されずに調停不成立となる場合には、さいごは離縁裁判によって離縁を目指すことになります。

ここで重要なのが、裁判で離縁が認められるための条件は何かということです。以下の、民法上の「離縁原因」の存在が必要となります。


第814条 (裁判上の離縁)

1.縁組の当事者の一方は、次に掲げる場合に限り、離縁の訴えを提起することができる。
一 他の一方から悪意で遺棄されたとき。
二 他の一方の生死が三年以上明らかでないとき。
三 その他縁組を継続し難い重大な事由があるとき。

①悪意の遺棄
②3年以上生死不明
③縁組を継続しがたい重大な事由

※参考裁判例 名古屋高等裁判所平成14年9月25日判決

裁判上の養親子関係の離縁原因である民法814条1項3号の「縁組を継続し難い重大な事由があるとき」とは、養親子としての生活関係を維持することができず、その回復が著しく困難な程度に破綻したとみられる事由があるときと解すべきところ、その解釈適用においては、縁組当事者中の強者による弱者の追出し離縁の防止と弱者の不当ないし破綻した縁組から解放されるべき自由の保護の2面があることを配慮すべきである。

つまり、「親が離婚した」、「養子に相続させたくない」という理由だけであれば、必ずしも裁判離縁を認めてもらえない場合があります。
そのため、できれば訴訟前の話し合いの段階(協議・調停)で、縁組を解消しておくことが望ましいといえるでしょう。

訴訟で離縁が認められれば、判決書が届きます。当事者のどちらか一方が控訴しない限り、2週間後に判決が確定します。その後、「判決書」と「確定証明書」を役所に持参すれば、離縁届を提出できます。

養子縁組を解消するときの注意点

離縁届の用紙は、離婚届と同様、市区町村の役場の戸籍係なら、どこでも気軽にもらうことができます。ただし、先に養子縁組の解消の手続で述べたとおり、まずは養親と養子との間での協議が必要になります。

相手が同意してくれないからといって、相手の同意なく、勝手に相手の署名捺印をして届出をしてしまうと、刑法上の文書偽造罪や、公正証書原本不実記載罪が成立して、刑事責任が問われる可能性があります。当然、離縁は無効ですから、養子縁組は解消されません。

(参照条文 刑法)

第159条(私文書偽造等)
1.行使の目的で、他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造し、又は偽造した他人の印章若しくは署名を使用して権利、義務若しくは事実証明に関する文書若しくは図画を偽造した者は、3月以上5年以下の懲役に処する。
2.他人が押印し又は署名した権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を変造した者も、前項と同様とする。
3.前二項に規定するもののほか、権利、義務又は事実証明に関する文書又は図画を偽造し、又は変造した者は、1年以下の懲役又は10万円以下の罰金に処する。

第157条(公正証書原本不実記載等罪)
1.公務員に対し虚偽の申立てをして、登記簿、戸籍簿その他の権利若しくは義務に関する公正証書の原本に不実の記載をさせ、又は権利若しくは義務に関する公正証書の原本として用いられる電磁的記録に不実の記録をさせた者は、5年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2.公務員に対し虚偽の申立てをして、免状、鑑札又は旅券に不実の記載をさせた者は、1年以下の懲役又は20万円以下の罰金に処する。
3.前2項の罪の未遂は、罰する。

養子縁組解消後の名字(苗字)・戸籍はどうなる?

養子の名字(苗字)について

養子縁組を解消した場合、養子の名字は「養子縁組前の姓」に戻ります。ただし、養子縁組から7年が経過していれば、離縁から3か月以内の届出により、「養子縁組時の姓」を名乗ることが可能です(「縁氏続称」といいます。)。

これは、氏の変更を目的とした縁組、離縁を防止するために、短期の離縁は当然復氏とし、縁組時の氏を名乗るためには7年の経過を要するとしたものです。

第816条(離縁による復氏等)
1.養子は、離縁によって縁組前の氏に復する。ただし、配偶者とともに養子をした養親の一方のみと離縁をした場合は、この限りでない。
2.縁組の日から七年を経過した後に前項の規定により縁組前の氏に復した者は、離縁の日から三箇月以内に戸籍法の定めるところにより届け出ることによって、離縁の際に称していた氏を称することができる。

養子の戸籍について

養子縁組が解消されると、養子は養親の戸籍から抜けることになります。

その際、「元の戸籍に戻る」、或いは「新しい養子のみの戸籍を編製する」かを選択します。この取扱いは、夫婦が離婚したときの取扱いと同じです。

養親の戸籍について

養子縁組を解消されても、養親の戸籍はあまり変わりません。
ただし、同じ戸籍中に入っていた養子が抜けるので、「@月@日養子縁組解消」と記載され、養子が戸籍から出たことが明記されます。

養子縁組解消後の連れ子との関係

離婚をすると、通常は相手の連れ子とつながっている意味は無くなるため、親子関係を解消したいと思うことが一般的です。

「相手と離婚したら、当然、その連れ子とも縁が切れる」と思われている方も多いのですが、法律上はそのよう取扱いになっていません。配偶者と離婚しても養子縁組の効力には影響しないので、何らの手続も取らなければ、離婚後もずっと連れ子との「法律上の親子関係」が継続することになります。

仮に、離婚時に連れ子と離縁しなかった場合、どのような問題が起こるでしょうか?
法的な問題が生じるのは、主に、「養育費」「遺産相続」です。

まず、養育費の支払義務が発生するという問題です。
親には子どもへの扶養義務があるので、子どもと離れて暮らしている場合、子どもの養育費を負担する必要があります。連れ子とは血縁関係はありませんが、養子縁組している以上、法律上の親子関係に基づいて養育費支払義務が発生します。離婚相手から養育費の調停を申し立てられると、双方の収入に応じて養育費を支払わざるを得ないこととなります。

次は、遺産相続されるという問題です。
親子(養親・養子)は、相互に遺産相続権があります。子どもは第1順位の相続人として、優先的に遺産を相続します。そのため、例えば、元妻の連れ子との養子縁組をそのままにしておくと、将来、自分が死亡したときに、連れ子が相応の遺産を相続できる結果となります。死亡時に実子がいたならば、連れ子と実子とが遺産分割協議をしなければならなくなり、トラブルになることも十分に予想されます。

養親・養子の死亡と養子縁組解消の関係

養親・養子が共に生存しているときは、先に述べたとおり、協議離縁のほか調停・裁判離縁という制度があります。

それでは、養親又は養子の一方が死亡してしまった後に、養子縁組の解消はできるのでしょうか?

養親又は養子のどちらか一方が亡くなった場合、その死亡をもって養子縁組は自然と解消するわけではありません。どちらか一方が亡くなった後に養子縁組を解消するのであれば、家庭裁判所の許可が必要です(民法811条6項)。なお、一方の死後に離縁をすることを、「死後離縁」といいます。

それでは、死後離縁をした場合、相続人としての地位はどうなるのでしょうか?

養親又は養子の一方が亡くなったときに、生存している一方が他方の相続人であった場合、死後離縁をしたとしても相続人としての地位は変動はありません。したがって、死後離縁によって相続権を失うということはありません。

養子縁組の解消と結婚等の関係

結婚後に養子縁組を解消する際の養子の名字(苗字)

民法816条1項によれば、原則として、離縁により復氏となります。但し、例外として、「縁氏続称」の手続をとれば、縁氏をそのまま使用することができます。

なお、養子が縁氏をそのまま使用すれば、当該養子の妻の名字もまたそのままとなります。

養子縁組解消後に相手(養親と養子)と結婚はできる?

あまり現実的なケースではありませんが、養子縁組を解消後に相手(養親と養子)と結婚はできるのでしょうか?

養子縁組をすると、その養子と養親とは、民法上は、血族となります(民法第727条)。そして、直系血族同士は、結婚することが出来ません(民法第734条)。そのため、養子縁組後の養親と養子は、縁組中には、両者は結婚する事は出来ません。

ところで、この養親と養子の直系血族関係は、その養子縁組の解消によって終わります。(民法第729条)そうすると、養子縁組の解消によって、元養親と元養子は結婚できる?とも思えます。

しかし、実際には、養親と養子は、たとえ養子縁組が解消することにより親子関係が終了したとしても、結婚する事はできません(民法第736条)。養子縁組の解消後でも結婚できない範囲は、次のグループ1に属する者とグループ2に属する者同士です。

〔グループ1〕
■養親  ■養親の直系尊属(例:養親の父母や祖父母等)

〔グループ2〕
■養子  ■養子の配偶者  ■養子の直系卑属(例:養子の子や孫等)
■養子の直系卑属の配偶者(例:養子の子の配偶者、養子の孫の配偶者等)

まとめ

様々な事情によって、実親による子どもの養育が難しいことがあります。或いは、実親による監護養育が可能であるとしても、氏の存続や、将来の相続関係を考慮して、養子縁組がなされることがあります。

しかし、(よく言われることですが、)「結婚するときは容易でも離婚するときには骨が折れる」のと同様に、養子縁組もまた、縁組をするときは容易でも、それを解消するときには様々な困難が付きまとうものです。

身分関係には高度の安定性が求められます。そのため、結婚や養子縁組のように身分関係を結ぶということは、一般的な契約よりも強い「拘束力」を生み出します。

養子縁組を検討される方がいましたら、できるだけ長期的な視点で、場合によっては解消するときに法的な紛争に発展しないかどうか等も含めて、十分に慎重な検討をされることをお勧めします。

この記事をシェアする