【離婚事例2】妻が同僚男性と不倫し、子どもを連れて出ていった事例
妻が同僚男性と不倫し、子どもを連れて出ていった場合の離婚に関する事案です。
1:相談内容
相談者:男性(会社員)
相談内容の概要は、「妻が同僚男性と不貞関係を続けていることが明らかになった。その後すぐ妻は子らを連れて出て行ってしまい、妻の弁護士から手紙が届いた。妻に対して、離婚・慰謝料を求めたい。子らの親権も譲るつもりはないし、子供にも会いたい。」というものでした。
2:解決までの道のり
この事件での主たる争点は、「不貞行為の有無」でした。
相談をお聞きしたのち、早々に、妻が離婚調停・婚姻費用調停を申し立てました。これに対し、夫からも離婚調停・面会交流調停を申し立てました。
面会交流調停は、相当な内容で成立しました。しかし、妻(相手方)が「不貞行為はありません。」という対応であったため、離婚調停と婚姻費用調停は不成立になりました。
争点は、「妻の不貞行為の有無」です。つまり、夫が「妻に不貞行為があったことを立証できるか」が最大のポイントです。夫が持っていた証拠は、GPS記録でした。その他にもいくつか不貞に関連する証拠があったので、GPS記録を証拠の軸として、その他の間接的な証拠も提出しました。
婚姻費用の審判(1審)では不貞行為の事実は認定されませんでしたが、夫が不服申立をした抗告審(2審)では、「性的な接触を強く疑わせる行為が妻にあった」旨の事実認定(※)があり、実質的に夫の主張が認められました(=別居の主たる原因が妻側にあるとして、夫から妻への婚姻費用支払義務が一部軽減されました)。
その後、夫は、妻と相手男性に対して、訴訟提起しました(妻には離婚・慰謝料請求、相手男性には慰謝料請求という形になります。)。従前より提出してきた証拠(GPS記録など)に加えて、婚姻費用抗告審での上記事実認定(※)がありましたので、妻も相手男性もやむを得ず不貞行為の事実を認めることになり、最終的には、夫に有利な金額で、和解で解決することができました。
他方、親権者は妻になりました。別居してから最終的な和解成立まで、2年3カ月かかりました。この間、夫は子らと定期的な面会交流はしていたものの、基本的な監護者は妻だったため、親権者決定においてはかなり不利な状況だったからです。夫としては苦渋の選択でしたが、最終的には総合的な判断で、親権者を妻とすることに同意することになりました。
3:解決のポイント
この事件は、『婚姻費用の抗告審で、性的な接触を強く疑わせる行為ありとの事実認定があったこと』が解決のポイントだったと思います。
本件では、抗告審の上記※事実認定により、それまでの風向きが180度変わりました。抗告審で結論が変わった理由として考えられるのは、①証拠の内容を分かりやすい言葉で再度説明したこと(GPS記録等の判別の仕方が少し難解なところがありました。)、②1審の裁判官の小さな見落としを的確に指摘したことです。
不貞行為の証拠は、“完全ではないもの”が多いと思います。基本的には閉ざされた空間での内密の出来事ですから、多くの場合、何かしらの反論ができるような余地があるものです。相手方が事実のとおり、自ら不貞行為を認めてくれるならば問題ないのですが、やはり多くの場合、何とか慰謝料の支払義務を免れたい等の思いから、「もう言い逃れできない」という段階になるまでは、不貞の自認がされることはないと思います。
そのため、手元にある複数の不貞行為に関連する証拠について、その具体的な意味内容や証明力の強弱などを考慮して、裁判官が「不貞行為あり」との判断ができるように、或いは、相手方が「もう言い逃れできない」と思うに至るように、適切に証拠を積み上げて説得的に説明していく作業が大事になります。
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