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2017.7.2.

過払金返還請求とは?

過払金とは?

消費者金融や,クレジットカード会社からの借入れについては,通常利息が付されます。利息制限法の上限を超えた利息を消費者金融やクレジットカード会社に支払っていた場合,その金銭を「過払金」といいます。

なぜ,利息制限法の上限を超えた利息が請求されたり,これを支払ったりするようなことが起こったのでしょうか。

過払金の仕組み

お金の貸し借りのことを,「金銭消費貸借」といいます。

金銭消費貸借の利息の上限は,利息制限法によって決められています。
利息制限法は,「元本が10万円未満の場合は,年20%」,「元本が10万円以上100万円未満の場合は年18%」,「元本が100万円以上の場合は年15%」というように利息の上限を定めています。

これを超える利息は,その「超過部分について無効」となる旨,利息制限法1条は規定しています。

しかし,現実には,消費者金融業者による貸付けにおいては,制限利率を超える利息が付されていることが多くありました。なぜこのようなことが起こっていたのかというと,以前は,出資法という法律がありました。この法律では,金銭の貸付けを業として行う者が,出資法の上限金利である年29.2%を超える金利で貸し付けし,その返還を請求する行為を刑事罰(5年以下の懲役もしくは1000万円以下の罰金)の対象としていたからです。

利息制限法の上限利率(年15~20%)は超えるけれども,出資法の上限金利(年29.2%)を超えないため,刑事罰は科せられない金利を“グレーゾーン金利”といいます。このグレーゾーン金利の存在こそが,過払金を発生させる仕組みといえるのです。

過払金が返還してもらえる理由

先ほども触れましたが,利息制限法1条1項は,制限を超える部分の利息を無効としているのですから,この規定がある以上,制限を超過する利息を支払っても返してもらえるのではないかと思われるかもしれません。

しかし,かつては,同じ条文の2項に,制限利息を超える利息を任意に支払ったときはその返還を求めることができないと規定があったのです。自分で制限を超える利息を払ってしまえば,返還を求めることはできないのが原則でした。

これでは,借り主にとって,あまりに酷です。

そこでまず,最高裁判所の判例は昭和39年11月18日の判決で,「債務者が,利息制限法(以下本法と略称する)所定の制限をこえる金銭消費貸借上の利息,損害金を任意に支払つたときは,右制限をこえる部分は民法491条により残存元本に充当されるものと解するを相当とする。」と判示したのです。現在では当たり前になっている,利息制限法所定の制限利率を超える利息を支払った場合にその制限超過利息を貸金元本に充当する,いわゆる「引き直し計算」が,この判例によって認められることになりました。

さらに,昭和43年11月13日,「債務者が利息制限法所定の制限をこえて任意に利息・損害金の支払を継続し,その制限超過部分を元本に充当すると,計算上元本が完済となったとき,その後に支払われた金額は,債務が存在しないのにその弁済として支払われたものに外ならないから,この場合には,右利息制限法の法条の適用はなく,民法の規定するところにより,不当利得の返還を請求することができるものと解するのが相当である。」として,最高裁判所は過払金返還請求をはじめて認めました。

不当利得(ふとうりとく)とは,契約等の「法律上の原因」がないにもかかわらず,本来利益が帰属すべき者の損失と対応する形で利益を受けることをいいます。民法703条は,このような不当利得については,損失を受けたものが利得を得たものに対して返還請求をできると規定するのです。貸金業者などが法律で許されない利率を超えて利息を受け取ることは,法律上なんら原因があるものではないので,この不当利得として返還を求めることができます。

過払金が返還されるまでの流れ

それでは,具体的にどのような流れで過払金の返還を求めていけばいいのでしょうか。

①専門家への依頼

過払金を返還請求するには,「取引履歴の開示」を求めて,返還請求ができるかを検討しなくてはなりません。そこで,法律の専門家である司法書士や弁護士に依頼をして返還を求めることが一般的です。

②専門家から貸金業者への受任通知の送付

専門家に依頼をすれば,「受任通知」というものを貸金業者に送ります。依頼を受けたことを貸金業者に通知することで,支払いの督促や取り立てを止める効果もあるので,この点でも専門家に頼むメリットがあります。

③取引履歴の開示依頼

専門家に依頼すれば,専門家から貸金業者に対し,取引履歴を開示するように依頼します。

④過払金の計算

貸金業者から取引履歴の開示があれば,これに基づいて,法定利率の引き直しの計算をして,いくら過払金として請求できるかを計算することになります。

⑤任意交渉

請求できる金額が分かれば,その後はまずは任意交渉といって,専門家が電話や書面にて過払金を返還してくれるように交渉します。

この際,返還金額や返還方法,返還時期などは,専門家と相談していくことになります。交渉の結果,貸金業者が返還に応じた場合,双方で合意書を取り交わします。

⑥返還の応じない場合は提訴

貸金業者が返還に応じない場合,裁判所へ訴訟を提起することが一般的です。

つまり,先ほど述べた不当利得返還請求事件として,貸金業者を相手に,訴えを提起するのです。具体的には,訴状を作成し,取引履歴などを証拠として裁判所へ提出します。

⑦裁判

裁判所は,第1回目の裁判の期日を決め,貸金業者に訴状が郵送されます。
すると,通常は,第1回目の裁判の前に,被告から答弁書という反論書が届くことになります。

これらの主張や証拠をもとに,裁判所は,双方に和解の提案をします。和解ができなければ,判決が言い渡されることになります。

過払金の対象者

「過払金とは?」の段落でもご説明したように,グレーゾーン金利で借入れをしていた方が対象となります。しかし,出資法の上限金利が20%に改められ,平成22年6月18日にこの改正法が施行されることにより,グレーゾーン金利はなくなりました。

これは,最高裁平成18年1月13日判決が「債務者が,事実上にせよ強制を受けて利息の制限額を超える額の金銭の支払をした場合には,制限超過部分を自己の自由な意思によって支払ったものということはでき」ないと判断したことを受けて,グレーゾーン金利撤廃の流れとなったからです。

ですから,この時期以前の借入れがある方が対象者となります。また,これ以前の借入れでも,銀行からの借入れは,一般的には銀行がグレーゾーン金利での貸付けをしていないため対象とはなりません。さらに,カードを利用してのショッピングの利用は,これは立替払いであり,借入れではなく,過払金返還の対象とはなりませんのでご注意ください。

過払金返還請求権の時効

そして,最後に気をつけていただきたいのが,時効の問題です。
お金を請求する権利のことを金銭債権といいますが,金銭債権は,行使をしないまま10年が経過すると,それ以降は行使できなくなってしまうのです。これを消滅時効といいます。

過払金の返還請求権も,金銭債権として10年で消滅時効にかかります。

どの時点から10年なのかという点は,「最終の返済日から10年」とされています。

まとめ

過払金請求はテレビのCMなどでも耳慣れた言葉だと思いますが,その詳細を理解している方は,意外と少ないかもしれません。
これを読んで,過払金の対象となるかもしれないと思った方は,時効の問題もありますので,早めに専門家にご相談されることをおすすめします。

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