田中・大村法律事務所

電話番号:079-284-0505

ブログblog

2016.10.30.

離婚協議書を公正証書にする方法と書き方[サンプル文例付き]

夫婦が離婚するときには、これまで築き上げてきた婚姻生活を、どのように解消するかについて取り決めをすることになります。金銭関係や子どもの関係については、特に後にトラブルになりやすく、離婚の際に約束したことを離婚協議書にすることが重要となるのです。

しかし、離婚協議書があるだけでは、離婚に際してどのような決め事をしたのかの証拠にはなりますが、これがあることのみで、相手の給料などを差し押さえることはできないのです。そこで、離婚協議書を公正証書で作成する方法が採られることがあるのです。離婚協議書を公正証書にする方法について学んでいきましょう。

公正証書とは

公正証書とは、法律の専門家である公証人が法律にしたがって作成する公文書です。公証人は、法務大臣が任命した裁判官、検察官などを長年務めた人の中から選ばれます。公正証書の原本は、公証役場に保管されます。

離婚協議書を公正証書で作る4つのメリット

(1)金銭の支払いが滞ったときの回収が容易となる

個人が作成した離婚協議書は、契約書としての効力はありますが、これは私文書です。このような離婚協議書で定めた慰謝料、養育費等の支払いがされなかった時には、債務不履行を理由として、裁判を起こしたうえで勝訴判決を得なければ強制執行することはできません。裁判となれば、弁護士費用がかかり、時間もかかります。

そこで、公正証書を作成し、離婚の際に取り決められた養育費の支払いなどについて「債務者は、本公正証書記載の金銭債務を履行しないときは、直ちに強制執行に服する」などの執行認諾約款の付いた公正証書を作成しておけば、執行力のある書面となり、裁判を起こして金銭を請求する必要がなくなるのです。これが、離婚協議書を公正証書で作る最大のメリットといえるでしょう。

(2)そもそも、金銭の支払いが滞ることを抑止する

また、そもそも金銭の支払いが滞ることを未然に防ぐというメリットも考えられます。公正証書を作成すれば、養育費などの支払を怠ると、裁判所の判決を得なくても直ちに強制執行を申し立てることが可能です。このことが、公正証書を作った者(支払義務者)に、任意の履行を事実上促すことになり、不履行を抑止することになります。

(3)証拠としての価値が高い

公正証書は、離婚協議書より、証拠としての価値が高いといえます。
たとえば、当事者だけで作成された離婚協議書は、裁判に証拠として提出した際に、そのような書面は作成していない、判子は自分が押したものではないなどと相手方から主張される可能性はあります。

しかし、公証人により作成された公正証書にはそのような心配はありません。

(4)内容に誤りがない

公正証書は、その内容を法律の専門家である公証人がチェックします。離婚協議書に記載すべき事柄の中には、法律の専門家でなければ判断が難しいことがらもあります。たとえば、不動産の財産分与について、ローンが残っている場合、夫婦が協議してローン契約の債務者を変更する旨を定めても、債権者との関係がありますので、当事者の取り決め通りに当然に変更できるわけではないのです。

内容に誤りがあれば、せっかく離婚協議書を作っても、それがかえってのちのトラブルの原因を作ることにもなりかねません。内容にも誤りがない離婚協議書を作成できることは大きなメリットといえるでしょう。

公正証書を作成する3つのデメリット

(1)作成に費用がかかる

公正証書作成の費用は、原則として、その目的価額により定められています(公証人手数料令9条)。以下を参照してください。もし、作成費用について不安であれば、直接、公証役場に問い合わせれば、丁寧に教えてくれることが一般的です。

公正証書作成にかかる費用

(2)作成に時間がかかる

公正証書の作成は、離婚協議書を作成するのに比べると少し時間がかかります。
まず、夫婦間で離婚に際して必要な事項を相談し、公正証書の原案を作成します。そして、この原案をもとに、公証役場に対し、公正証書の作成を依頼します。

ここで、この原案は、公証人によって内容が適正・妥当かどうかのチェックを受けます。
もし内容に誤りがあれば、訂正・調整を促されることになるでしょう。

(3)当事者が出頭する必要がある

公正証書作成の当日に、離婚の当事者である夫婦が公証役場に出頭しなければならないことも、デメリットのひとつといえるでしょう。
双方に仕事があれば、平日の公証役場の業務取扱時間内に都合をつけて出頭することが難しい場合も少なからずあるでしょう。
また、離婚をする2人で顔も合わせたくない場合もあるでしょう。

代理人による出頭で許される場合もあるのですが、やはり、双方が時間を合わせて出頭することの負担が、離婚協議書を公正証書で作成することを躊躇する要因のひとつといえるでしょう。

公正証書ができるまでの流れ

(1)原案の作成

離婚協議書を公正証書で作成する場合、まず、夫婦間での話し合いをし、離婚についての条件の内容を話し合います。親権者はどちらか、養育費の額、慰謝料の有無・その額・支払方法、財産分与の額・内容、子どもの面会交流についての事柄などが含まれます。
これについて話がまとまれば、この内容をまとめて、公正証書の原案を作成します。

(2)公証役場での事前協議

原案ができれば、公証役場に公正証書の作成を依頼することになります。ここで、その原案の内容が適正・妥当かどうか、公証人がチェックすることになります。

公証人は原案をみて、疑問点や補充すべき点などを当事者に確認することになります。原案の作成の段階からしっかりと話し合いをしておくことが重要です。なお、このチェック段階では、夫婦双方が公証役場に出向く必要はありません。

(3)本人確認資料等の収集

当事者の確認資料や、公正証書の内容を確認するための資料を収集します。
当事者を確認する資料としては、運転免許証やパスポートなどです。代理人が公証役場に行く場合は、本人の実印が押された委任状のほか、代理人自身の本人確認ができる資料が必要となります。

公正証書の内容を確認するための資料としては、不動産を財産分与する場合には不動産登記簿謄本(登記事項証明書)、保険に関する取り決めをする場合には保険証券、住宅ローンに関する取り決めをする場合には住宅ローンの契約書であり、取り決めの内容によって必要な書類が異なります

(4)公証役場での公正証書の作成

公証役場で、公正証書の作成日を予約し、当日に公証役場を訪問します。
証人の面前で公正証書の読合せを行い、当事者と公証人が署名・押印します。
公正証書が完成すれば、手数料を支払い、公正証書謄本を受け取ります。

公正証書の雛形

それでは、実際に離婚の公正証書の見本となるサンプルをみてみましょう。
テンプレートとしてもお使いいただけます。

離婚協議書

甲  雛形○子
乙  雛形○男

第1条(離婚の合意等)
1 甲及び乙は、協議により離婚(以下、「本件離婚」という。)することに合意する。
2 乙は、甲に対し、乙の署名・押印のある離婚届を交付し、甲は、当該離婚届に必要事項を記載し、甲の署名・押印のうえ、速やかに役所に提出する。

第2条(親権等)
甲及び乙は、2人の間に生まれた未成年の子である雛形○え(平成●年●月●日生)、雛形○よ(平成●年●月●日生)(以下、「未成年者ら」という。)の親権者を甲と定め、甲において未成年者らを監護養育する。

第3条(養育費等)
1 乙は、甲に対し、未成年者らの養育費として、平成●年●月から未成年者らがそれぞれ満20歳に達する日の属する月まで、毎月末日限り、1人当たり月額●円を甲の指定する口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。
2 未成年者らの進学、事故、病気等により特別の費用が発生する場合には、その費用負担について、別途、甲及び乙が協議する。

第4条(面会交流)
1 甲は、乙と未成年者らが月に1回程度、面会交流することを認める。
2 面会交流の日程、場所、時間等については、未成年者らの意思を尊重し、甲及び乙がその都度、協議して定める。

第5条(慰謝料)
乙は、甲に対し、慰謝料として、金●円を支払う義務があることを認め、平成●年●月●日限り、同金員を甲の指定する口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。

第6条(財産分与)
乙は、甲に対し、本件離婚に伴う財産分与として、金●円を支払う義務があることを認め、平成●年●月●日限り、同金員を甲の指定する口座に振り込んで支払う。なお、振込手数料は乙の負担とする。

第7条(年金分割)
1 甲及び乙は、本件離婚に際し、厚生労働大臣に対し、対象期間標準報酬総額の改定又は決定の請求をすること及び請求すべき按分割合を0.5とすることに合意する。
2 甲は、速やかに、厚生労働大臣に対し、前項の請求をする。
甲(昭和●年●月●日生)
基礎年金番号:●●●
乙(昭和●年●月●日生)
基礎年金番号:●●●

第8条(清算条項)
甲及び乙は、本件離婚に関し、本書に定めるものの他、何らの債権債務のないことを確認し、今後、財産分与、慰謝料等名目の如何を問わず、互いに何らの財産上の請求をしない。

第9条(強制執行認諾)
乙は、本書に定める金銭債務の履行を遅滞したときは、直ちに強制執行に服する旨を陳述した。

平成●年●月●日

まとめ

離婚協議書を公正証書で作成するということがどのようなことなのか、ある程度理解し、具体的なイメージを持っていただけたでしょうか。離婚を決意し、新しい人生を歩み始めようとしているときに、離婚に際して定めた約束についてトラブルが生じることは誰もが避けたいことでしょう。

そのために、離婚協議書を公正証書で作成するという選択をすることを是非検討してみてください。

この記事をシェアする